新規獲得とCRMの分断を超える。オルビスが挑む“共通指標”マーケティング
- 23 時間前
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左:ダイレクトブランディング部 アフィリエイトグループ マネジャー 南湖 真希
右:CRM推進部 初期育成グループ アシスタントマネジャー 西田 美咲
こんにちは。採用広報の仁尾です。
オルビスの事業は、お客様と長く深い関係を築くため、LTV(顧客生涯価値)の最大化を軸に組み立てられています。新しいお客様との出会いをつくる「新規獲得」と、初めて接点を持ったお客様との関係を深める「CRM推進」は、このLTVという一つの軸をそれぞれの持ち場から支える仕事です。
しかし、それぞれが自部署のKPIだけ見ていると、足並みが揃わなくなることも。それによる対立を防ぐためにも、オルビスは2026年から、この二部署が「共通の指標」を持つ体制へと移行しました。今回お話を伺ったのは両部署のマネジャー2名。新規獲得を担うダイレクトブランディング部の南湖真希さんと、お客様との関係を育むCRM推進部の西田美咲さんです。
相反しがちな二つの目標は、体制移行によってどう両立されているのでしょうか。そして、そこにある両者のやりがいとは。異なる持ち場に立つお二人の対話からお届けします。
“部署最適”が生んだ、構造的な課題
——まずは、お二人が現在どのようなお仕事をされているのか教えてください。
南湖 私はダイレクトブランディング部のアフィリエイトグループに所属しています。担当しているのは、初めてオルビスと出会うお客様に、初回のご購入、そして二回目のご購入まで進んでいただくための働きかけです。
まだオルビスを使ったことのないお客様が主に広告を通じてオルビスと出会い、お買い物をしていただくところまでがミッションです。自社にて広告を運用したり、メディアを持つ外部企業やインフルエンサーとも連携しながら広告を展開していきます。
西田 私はCRM推進部の初期育成グループに所属しています。南湖さんのチームが獲得した、オルビスと初めて接点を持ってくださったお客様に向けて、コミュニケーションを設計する部署です。
商品の初購入日を起点に30日・90日のF2転換率や、当年購入者の累積F2・F4到達をKPIに持ち、F1からF2・F4への関係深化、LTVの向上などをミッションにしています。一人のお客様を、南湖さんの持ち場から私たちの持ち場へと引き継いでいくような関係ですね。

——南湖さんの部署は、新規獲得を担いながら、お客様の「二回目購入」までを見ているんですね。
南湖 はい。その背景には、この数年の両部署の課題が大きく関わっています。
——どういうことでしょうか。
西田 実は昨年度から、通販ビジネスの土台である「顧客リストの減少」という課題を抱えていました。その背景には、購買のきっかけが初回購入者向けセットの「お得感」に寄ってしまい、二回目以降のご購入につながりにくいケースが増えていたことがあります。
「お得だから購入する」という動機では、商品の機能価値やブランドの考え方がお客様に十分伝わりにくくなります。結果として、F2転換率が通常の半分ほどまで落ち込む月もあり、お客様に伴走する本来の業務よりもリカバリー対応に追われるような状況でした。
南湖 新規獲得側が、結果的にお得感をフックにした訴求に寄ってしまっていたのは事実です。昨今の化粧品市場は、韓国スキンケアの浸透や美容医療まで競合が拡大したことにより、これまでと同じ方法では新規のお客様を獲得するのが難しい状況になりました。もちろん、商品の特徴、強みをお客様にお伝えすることでご購入につなげたい思いがありましたが、目標数を担保する難度が上がる中で、オルビスに関心を持っていただくための最初の一歩として、購入のハードルを下げる訴求が増える傾向にありました。
新規獲得とCRM、共通の指標が現場の動きを変えた
——それぞれの目標が相反していた状況を、どう変えていったのでしょう。
西田 KPIを部署単位で最適化していること自体に構造的な問題があるのではないか、と考えました。たとえば新規獲得側はCPO(顧客獲得単価)と獲得件数を指標にしていたのですが、それだとお客様の母数は増やせても、その後のお客様との関係が反映されません。獲得時点だけでなく、後に続く関係性の深化まで含めた策を選ぶには、短期から中長期へと指標の時間軸を変える必要があると思いました。
それを部長陣に相談したところ、体制を見直す一つのきっかけとなり、新規獲得側のKPIに「F2転換者数」が、CRM推進側には「F2転換率を分解した30日・90日の転換率」が、重視する指標として加えられることに。目線を揃えて中長期的な関係深化を追えるようになりました。

——新規獲得とCRM推進で中長期的な指標を持つようになったことで、現場ではどのような変化が生まれていきましたか。
南湖 正直、最初は「ハードルが高いな」と感じました。新規獲得の数を伸ばすだけでも難しくなっているのに、さらに第二の指標まで担保できるのだろうか……と。
一方で、獲得数だけでなく、お客様との長期的な関係構築まで責任を持つためには必要な変更だと感じていました。そこで、「F2転換者数」までを担う意義や、この変更が事業にどう寄与するのかをチームで共有しながら、目線合わせを進めていきました。
具体的に変わったのは「訴求軸」です。「このセットがいかにお得か」を前面に出すと、「お得」に惹かれるお客様が集まる広告になってしまいますが、オルビスの強みはお得感だけではありません。たとえばポーラ化成の研究所を持ち、お客様の悩みにきちんと応える商品を届けていることなど、長く使いたいと思ってくださるお客様に響く価値を、これまで以上にしっかりと訴求に乗せていきました。

——部署名も、2026年から「新規獲得部」ではなく「ダイレクトブランディング部」という名称になったそうですね。
南湖 求められるものが変わったことが、部署名にも表れていると理解しています。昨年までは、KPIは新規獲得に置かれている中で転換も意識し、相反する2つの指標のバランスを見ながら獲得を進める、という少し曖昧な状態でした。ですが今は、部署をまたいで設けた共通の指標によってどこを目指すべきなのか明文化されているぶん動きやすくなったと感じています。
メンバーの動きも活発化しており、たとえば「ポーラ化成と共同開発だと、なぜお客様にとって良いのか」を真摯に伝えようと、自らポーラ化成へ写真を撮りに行って広告素材として使用する、などの自発的な動きが見られています。
——新規獲得側の動きが変わったことで、CRM推進側の施策にはどのような影響が現れましたか。
西田 その後の転換まで見据えた新規獲得の施策が動き出したことで、CRM推進側はお客様との関係づくりの起点から、経過日数別に心情に寄り添ったコミュニケーションの設計に時間を割けるようになりました。
30日・90日・180日とお客様のマインドマップをつくり、DM・メルマガ・LPを一貫した軸で組み立てています。新規が展開するMDと連動させて施策を設計することも増えてきました。
相乗効果がもたらした、F2転換率157%伸長の手応え
——新しい方針で取り組むなかで、変化の手応えを感じた事例があれば教えてください。
西田 2026年4月から取り組んだ『リンクルブライトUVプロテクター』と『オルビス ザ クレンジング オイル』の販売促進施策です。これはF2転換率の向上を目指し、スキンケアのトライアルを初めてご購入いただいたお客様のクロスセルを強化するものでした。
きっかけは、オルビスとの接点がまだ少ないお客様の分析です。そうした方々は、ブランドへの信頼が十分に育つ前の段階にあるため、「市場での認知度が高い」「他社との違いが分かりやすい」商品の方が魅力を感じやすいのではないかという仮説を立てました。そこで、スキンケアの継続利用を促す施策に加え、初回購入時から別商品の価値も伝えるアプローチを検討し始めました。
ちょうど同じタイミングで、新規獲得チームがその2商品をサンプルとして同梱する準備を進めていました。初回配送はお客様の熱量が最も高いタイミングです。サンプルで実際に体感してもらいながら、リーフレットで丁寧に説明を添えれば、納得感も購入意欲もより高まるはず。
両チームの動きが自然に合流する形で施策がスタートし、CRM側でこの2商品を主役にしたリーフレットを設計、初回配送箱にサンプルと一緒に同梱しました。
その結果、4月の施策開始から現時点(2026年5月13日時点)でF2転換率は157%という伸びを見せています。

キャプション:サンプルに同梱したリーフレット。
南湖 新規獲得とCRM推進で連動できていることは、この領域にかかわる全員にとってプラスでしかありません。昨年は「F2への転換状況が厳しい」と言われ続けて焦りを感じていましたが、今は私たちの動きがCRM推進側に寄与できている実感があります。だからこそ、安心してF1獲得のアクセルを踏めるんです。
——両部署は、施策を回すサイクルそのものも違うはずですが、今回のような連動が成功したのは何が変わったからなのでしょうか。
南湖 おっしゃるとおりで、CRM推進側は一つの施策を準備するのに2~3ヶ月かかります。一方で新規獲得側は、バナー広告であれば一週間単位で訴求の調整を行うほど施策の改定が速い。そうしたサイクルの違いは業務上避けられません。
昨年までは、互いの施策の中身やチームの業務について解像度が上がっておらず、連携が大枠で止まっていたところがありました。共通指標の体制になってからは、マネジメント間だけでなく、双方のメンバー全員が顔を合わせて話す場を持つようになり、「新規獲得がなぜこの訴求をしているか」「CRM推進側はなぜこのタイミングで動くか」と両者の意図が、メンバー単位で理解し合えるようになってきました。
手掛ける業務自体は同じでも、対話の回数が増えたことでお互い気持ちよく動けるようになり、その変化が成果に与える影響もとても大きいと感じています。

専門性を深めながら、仕事の視座も高まるキャリアの築き方
——お二人とも転職を経て入社されていますが、今回の連携の経験なども踏まえ、オルビスで働くことはご自身のキャリアにとってどのような実感をもたらしていますか。
西田 会社によっては部門が完全に切断され、他の領域が見えない現場もありました。ですが、オルビスでは他部門との連携やバリューチェーンを見据えた戦略を採れます。専門領域への深さを保ちながら、新規獲得とも横断的に目線を揃えて取り組めている今は、「いいとこ取り」ができている感覚があります。
南湖 これまで新規獲得の領域を一貫して取り組んできたのですが、その間CRMに目を向ける機会は多くありませんでした。オルビスの場合は何かを判断する際に、「お客様にとって」を軸とするという基準がはっきりしているため、自領域都合で各部門最適になることなく、自然と他の部門に目が向いていきます。専門性を追求しているのに、視座が高まっていくんです。
また、部門横断型のタスクフォースなどの仕組みもあります。部署を超えて一つの商品を届ける様子を間近で見て、「マーケティングでこういう面白いキャリアの築き方があるんだ」と心が動いた経験は、オルビスだからこそだと思います。

——それぞれメンバーを率いるマネジャーでもあるお二人が、マネジメントで大切にしていることを教えてください。
西田 本人の成長や楽しさと、部署への貢献を両立できる状態を目指したいので、一人ひとりの意思を尊重することを大事にしています。個人の特性によって受け止め方も違いますから、まずメンバーが「どう考え、どう捉えているか」確認し、その上で「会社の状況と結びつけるためにどうするか」を話していく。個別のコミュニケーションを丁寧に積み重ねていくリーダーでありたいですね。
南湖 これまでの上司を見てきた中で、一緒に働きたいと感じたのは楽しそうに仕事をしている人でした。だから私自身も、メンバーから見たときにそういう存在でありたい。また、新規獲得部門は新卒からずっと在籍する若いメンバーも多いため、新規獲得とCRM両方の視座を持って動ける今の経験が持つ意味を伝えるようにしています。
というのも、同業者に「新規獲得の部署でF2の数値まで見ています」とお話しすると、「本当にそんなことができるんですか」と驚かれることもあります。そのくらい乗り越えたら大きな意味を持つ挑戦をしていると思うので、その状況を前向きに楽しんでもらえるよう目線を合わせていきたいです。
——最後に、これからオルビスで実現していきたいことを教えてください。
南湖 まずは、市況がどう変化したとしても、オルビスというブランドの魅力や価値をすべて使って新規獲得を広げていける部門にしていきたい。そして、お客様から見たときのオルビスのイメージそのものをより良い方向へ引き上げていきたいです。
新規獲得とCRM、そしてその先にあるお客様一人ひとりへのコミュニケーションまで連動できるようになれば、「ブランドとしてのオルビス」の解像度がお客様の中でさらに上がっていくはずです。マーケティングに関わる人間として、そこまで踏み込んでいけたらと思っています。
西田 オルビスを生涯ブランドとして世の中に浸透させていきたい、というのが私の目標です。ブランドと出会った直後の熱量が高いタイミングで接点を持つ私たちの部門が、どのようなコミュニケーションでお客様に寄り添えるかが、ブランドを継続いただけるかの決め手になります。
足元のKPIを追いながらも、一つひとつの接点でお客様から見たオルビスのイメージを意識した訴求を積み重ねていく。ライフステージが変わっても、オルビスがずっとそばにある、そういう長く深い関係を築くためのアプローチをしていける組織づくりを目指したいです。

Profile
南湖 真希(Nanko Maki)
2023年4月に中途入社。ダイレクトブランディング部(新規顧客獲得)にて、アフィリエイト領域を担当。2025年1月より同グループマネジャーに就任。
西田 美咲(Nishida Misaki)
2020年4月中途入社。定期販売立ち上げ時のコミュニケーション戦略設計などを経て、2023年5月より初期育成グループで同領域における施策全般を担当。2026年4月より同グループアシスタントマネジャーに就任。
取材・文:木内アキ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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※本記事内容は、公開日(2026年6月23日)時点の情報に基づきます。


